神経内科医の覚え書き

神経内科専門医、総合内科専門医。研究から臨床に戻りました。記憶整理用の覚え書きです。

体位性頻脈症候群

Postual Orthostatic Tachycardia Syndrome (POTS)

 

起立不耐症 (Orthostatic Intolerance: OI) の一つ。

立位により心拍数が急上昇して下記の様な症状が現れる。

  • 目がぼやける
  • 立ちくらみ、めまい、失神
  • 動悸
  • 頭痛
  • 集中力の低下
  • 疲労
  • 胃腸症状
  • 息切れ
  • 頭部、頚部、胸部の不快感
  • 脱力
  • 睡眠障害
  • 活動困難
  • 不安感
  • 四肢の冷えや痛み

 

診断基準

  • Head-up tiltや起立試験で立位10分以内に心拍数が30回/分以上上昇する(20歳未満は40回/分以上)
  • 起立時の血圧低下がない
  • 立位で諸症状が悪化し、外で軽減する

*POTSは午前中の方が症状が強い。診断の精度を高めるため、起立試験は午前中に行う方が良い。

Transient Myoclonus state with Asterixis in Elderly Person

高齢者の羽ばたき振戦を伴う一過性ミオクローヌス(TMA

  • 慢性疾患を有する高齢者に生じやすい
  • 急性発症で徐々に増悪
  • 頚部や上肢に強いミオクローヌスを呈し、運動により増強
  • 自発的なミオクローヌスに加えてasterixis(固定姿勢保持困難)
  • 意識減損は伴わない
  • 眼球運動は正常
  • 自律神経障害や失調は伴わない
  • 数日以内に軽快し、後遺症を残さない
  • ジアゼパムやクロナゼパムが有効
  • 症状改善後には治療を要さない
  • 発作の原因は不明だが感染が契機になることがある
  • 再発することがある
  • 脳波では異常なし

Hashimoto. et. al. J Neurol Sci. 1992. 

 

性感染症の除外

代謝性疾患の除外(血液検査)

頭部の画像検査で二次性ミオクローヌスの除外

  → 脱水、疲労などの誘引があればTMAを考える。リボトリール内服で経過観察。

 

末梢性顔面神経麻痺

特発性末梢性顔面神経麻痺 (Bell麻痺)

多くはHSV-1の再活性化に関連して発症すると考えられている。

内科的治療

 無治療でも70%以上が後遺症を残さずに寛解

 発症3日以内、遅くとも10日以内に開始。

①PSL 1mg/kg/day or 60mg/day

 5-7日間内服後、1週間かけて漸減

 *中等症以下、高齢者では0.5mg/kg/day or 30mg/day

②抗ウイルス薬

 バラシクロビル 1,000mg/day 分2(5-7日間)

 アシクロビル 1,000 - 2,000mg/day 分2-4(5-7日間)

③メコバラミン 1,500µg/day 分3

 寛解まで or 発症後8週間まで

 

遅発症状

 隣接する神経に異所性再生や混信伝導を起こすことにより病的共同運動が生じる

ex) 瞬きをすると口角が不随意に動く、食事の時に涙が出る、麻痺即顔面の筋痙攣 など

 

 

Ramsay Hunt 症候群

耳介周囲の帯状疱疹、顔面神経麻痺、第Ⅷ脳神経症状(耳鳴、難聴、めまいなど)を3主徴とする。

*全てが揃う典型例は少ない。

  • 顔面神経麻痺はBell麻痺より重症で予後不良(自然治癒率30%)
  • 治療介入による完治率は約60%
  • めまいは難治性で前庭代償が困難